桜井市とその周辺に広がる、磯城、山辺、磐余の地域は、飛鳥に繋がる日本国家誕生の舞台です。とくに纒向遺跡は、ヤマト王権の大王都が最初に置かれた場所とされ、まさにその出発点にあたります。
纒向遺跡とその周辺地域の調査と研究を充実させ、そこから、この国の成り立ちや歴史、文化の原像を解明するための横断的な 「学」、それが「纒向学」の骨子です。
「纒向学」 は、一地方の、一小地域名を冠して命名した学問領域ですが、その内容は世界にも比肩すべき意義と重要性を孕んでいます。また、この国の成り立ちを究明していくことは、私たちの祖先が歩んできた姿を再認識し、経験した多くの困難や叡智を見いだすことにもなります。そこから21世紀に生きる私たちが抱える幾多の困難や難問を解決するすべも見いだすことができるかもしれません。
「纒向学」 は、ただ学問上の意義や現在的な意味を成果として発信するだけではありません。その成果をわかりやすく、広く市民や国民に向けても発信し、学校教育や生涯学習に活用し、また地域社会と連携して新しい地域の再建に寄与するものでなくてはならないと考えています。そのための方法論や実践学の模索も「学」としての重要なテーマです。「纒向学」は、21世紀に生きる私たちにとって、歴史と文化遺産に包まれた環境作りの心地よさを実践するための仕掛けでもありたいのです。