2013年2月23・24日の2日間、纒向学研究センターにおいて平成24年度定例研究集会(第1回)を開催しました。
この研究集会はセンターの研究事業のひとつとして、所員のほか、教育委員会が委嘱した非常勤共同研究員の先生方にご参加いただき、研究発表や意見交換などを行います。
今回はその第1回目の研究集会ということで、1日目は自己紹介を兼ねたミーティングの後、共同研究員の奥田尚先生に「土器胎土から見た生産地の推定」と題してご発表いただきました。その後は皆で纒向遺跡出土土器の検討を行い、その際に奥田先生から胎土観察についてのレクチャーを受けました。
2日目は、森・橋本・丹羽・武田所員からの資料報告の後、共同研究員の金原正明先生より「畿内における植生環境と纒向遺跡の特殊性」と題してご発表いただきました。
定例研究集会は、原則として年1回の開催を予定しており、臨時の研究集会の開催も含め、研究の質の向上に努めていきたいと思います。
ご発表される奥田先生
遺物検討のようす
遺物検討のようす
ご発表される金原先生
2013年2月10日(日)に東京都千代田区有楽町のよみうりホールにおきまして、東京フォーラム「纒向出現」を桜井市の主催、読売新聞社の後援により開催し、約800人の方々にご来場いただきました。
今回は「纒向に卑弥呼がいたなら」という邪馬台国ヤマト説を前面に打ち出したテーマで、第一線で活躍されている先生方を講師にお迎えしてご講演いただいたほか、その後はシンポジウムを行いました。
まず午前の部では、基調報告として橋本輝彦所員より「纒向遺跡の特質と邪馬台国」と題した講話があり、続いて講師の愛知県埋蔵文化財センターの赤塚次郎先生より「ヤマトと狗奴国」と題したご講演をいただきました。
午後の部では、国立歴史民俗博物館教授の広瀬和雄先生より「卑弥呼とヤマト王権 ―初期前方後円墳と邪馬台国―」と題したご講演をいただき、その後は、パネラーに講師の皆様に加え、日本考古学協会会員で俳優の苅谷俊介先生をお迎えし、寺沢薫所長をコーディネーターとして「纒向に卑弥呼がいたなら」をテーマにシンポジウムを行いました。シンポジウムでは、纒向遺跡の評価や、邪馬台国との関連性などについて、活発な討論がなされました。
来年度は「卑弥呼は九州にいたか?」をテーマとしたフォーラムの開催を目指しています。ご期待ください。
多数のご参加、本当にありがとうございました。
沢山の皆様にご来場いただきました
ご講演される赤塚先生
ご講演される広瀬先生
シンポジウムのようす
2013年2月3日(日)に、纒向遺跡第176次調査の現地説明会を開催しました。当日は好天に恵まれ、約1300人と多くの方が現地へお越し下さいました。
今回の調査では、これまでの調査で確認されている3世紀前半の建物群と重複するかたちで4世紀中頃〜後半の溝が見つかり、調査区が立地する微高地の東側と南側、西側の一部を取り巻く大規模な区画溝の一部であることがわかりました。
また、この溝は首長居館を囲う溝の可能性が考えられるもので、複数の時期にまたがって居館が造営されているこの土地が、居館の造営に適した場所であったことをうかがわせる成果が得られました。
参加された皆さん、本当にありがとうございました。
たくさんの方々がお越し下さいました
調査成果を説明する森所員
4世紀代の溝が見つかりました
出土遺物展示コーナーのようす
2012年12月16日(日)に、第3回 纒向考古楽講座を開催し、19名が参加されました。
最後となる今回は、【纒向遺跡とはなにか】と題して、これまでに学んだ纒向遺跡に関する様々な事柄を総括して、纒向遺跡について自由に考え、皆で議論を深めることにしました。
議論に入るまえに、まずは現在調査中の纒向遺跡辻地区の居館域の発掘現場を見学しました。現場では、調査を担当する森所員から発掘で見つかった遺構についてや、そこからどんなことがわかったのかなどの説明がありました。
現場見学のあとはセンターへ戻り、施設見学の後、今回の講座の最終問題として、次の問題について班ごとに分かれて議論してもらい、その結果を発表してもらいました。
【Q】日本最初の都市ともいわれる纒向遺跡ですが、なぜここに各地から人々が集い、大きな遺跡がつくられたのでしょうか?
この討議が講座の集大成になることもあり、各班とも話し合いや検討作業は白熱したものとなりました。
参加された皆さん、本当にありがとうございました。
発掘調査中の現場を見学しました
班に分かれて、纒向遺跡について議論しました
2012年11月18日(日)に、第2回 纒向考古楽講座を開催し、今回は22名が参加されました。
今回の講座は、【纒向遺跡を歩いてみよう!】と題して、穏やかな秋空のもと纒向遺跡に点在する古墳や発掘調査地点を3時間かけて歩いて見学しました。見学に際して、参加者の方々には事前に見学ポイントに関するクイズを8問用意し、見学終了後に解答してもらうことにしました。
古墳や遺跡の見学が初めての方もたくさんいらっしゃり、大きな古墳が人の手によって作られたことや、発掘調査でのこぼれ話など、各ポイントで行われる所員からの説明にはクイズのヒントも隠されていたので、説明を聞く表情は真剣そのものでした。
見学終了後にクイズの答え合わせを行いましたが、皆さん見事全問正解!
古代のマキムクに想いを馳せながらの有意義な見学会となりました。
次回(第3回)は【古代の遺物を触ってみよう!】です。土器を大いに触っていただき、楽しく学んでいきたいと思います。ご期待下さい。
辻地区の居館域を見学しました
箸墓古墳のまわりを半周しました
桜井市箸中の(株)三輪そうめん山本さんの本社エントランスホールにて、纒向遺跡出土の遺物が展示されているのを、皆さんご存知でしょうか?
この展示は桜井市教育委員会と(株)三輪そうめん山本さんとの協定に基づき、桜井市教育委員会によって行われているもので、展示内容は(株)三輪そうめん山本さんの本社建設時の発掘調査(纒向遺跡第16次調査)で発見された遺物を常設展示するコーナーと、半年〜1年に一回程度入れ替えをしながら展示をおこなうコーナーの2つのコーナーで構成されており、現在は建物群や桃の種が大量に出土した大型土坑などが確認された辻地区の居館域の調査で出土した遺物や写真パネルなどを展示しています。
このコーナーの設置にあたっては営業時間中は誰でも無料で自由に見学ができること、鍵のかかる専用ケースを準備すること、24時間セキュリティ管理が行われている施設であること等々、様々な制約がありましたが、新たに専用の展示ケースをしつらえていただくなど、(株)三輪そうめん山本さんのご厚意により展示コーナーの設置に至ったものです。纒向遺跡の見学の際にはぜひお立ち寄りください。
なお、展示の見学にあたって特に制約はありませんが、大人数でのご見学に際しては事前に(株)三輪そうめん山本さんへお問い合わせをお願いいたします。 【(株)三輪そうめん山本 0744‐43-6661】
展示コーナーのようす
桃の種も展示しています
2012年10月21日(日)に、第1回 纒向考古楽講座を開催しました。この講座は主に考古学初心者の方を対象としたもので、小学生から年配の方まで、24名が参加されました。
今回の講座では、【纒向遺跡ってなんだ?】をテーマに、まず森所員から、考古学って何?、それってどうやってするもの?、纒向遺跡ってどんな遺跡なの?といった基礎的なレクチャーが行われました。
このあと、参加者は班ごとに分かれて、先ほどのレクチャーで学んだ考古学的な方法に則って、次の2つの問題について議論してもらいました。
【Q.1】纒向遺跡から出土した時期の異なる3つの土器を観察し、それらが作られた順番とその理由を考える。
【Q.2】纒向遺跡でみつかった大型土坑(大きな穴)から出土した遺物から、昔ここでどういった意味で、どのような行為が行われたのかを推理する。
討議は実際に土器などの遺物を手に取って観察を行いながら進められました。「初対面の知らない人同士で議論が盛り上がるかなぁ?」とのスタッフの心配をよそに、実際の遺物を前にすると皆さんの目の色が変わり、老若男女関係なく時が経つのも忘れて活発な議論が交わされることとなりました。
班ごとの発表では考古学的な知識を踏まえた手堅い発表や、自由な発想による興味深い学説が発表されたほか、小学生の方からは考古学者もビックリ!な鋭い指摘があったりし、大いに学び・考え・盛り上がった一日となりました。
次回(第2回)は【纒向遺跡を歩いてみよう!】です。ただのウォークとはちょっと趣向を変えて、楽しく遺跡を歩きたいと思います。ご期待下さい。
班に分かれて、土器や遺構について考えました
班で考えた結果を、発表してもらいました
総合討論のようす
韓国の嶺南考古学会主催、ウリ文化財研究院後援によるシンポジウム『韓日地域 古代王権と国家の形成』が、2012年10月6日(土)に釜山市立博物館で開催されました。
このシンポジウムでは、まずはじめに寺沢所長、韓国 慶北大学の李盛周先生、韓国 嶺南大学の金大煥先生による講演が行われました。所長は、「日本の古代王権の形成」という演題について講演されました。その後、韓国 慶北大学の李熙濬先生を座長として、京都大学の吉井秀夫先生など日韓の5名の先生方が討論に加わり、日韓の古代王権と国家の形成について熱い議論が繰り広げられました。
天理市立黒塚古墳展示館の開館10周年と、桜井市纒向学研究センターの開設を記念したイベント、「記紀・万葉の薫り漂う大和の国から纒向遺跡・オオヤマト古墳群がやってきた! 」が、2012年9月13日(木)から9月25日(火)の間、東京の奈良まほろば館で開催されました。
このイベント会期中の9月22日(土)・23日(日)の2日間は、ウィークエンドスペシャルとして天理市教育委員会・当センター職員によるミニ講座や、勾玉作り、古代のお金の鋳造体験、纒向遺跡から出土した土器の展示などが行われ、当センターからは橋本・木場の両所員が参加してまいりました。
23日(日)はあいにく雨模様のお天気でしたが、ミニ講座は両日とも満員で、来場者の皆さんは纒向遺跡の調査成果についての講演をとても興味深く聞いておられました。和同開珎や富本銭の鋳造体験も2日間で200人近くの方々がご参加くださり、鋳型に溶かした金属を流し込むところから完成までの工程を所員の解説を交えながら体験していただき、盛況のうちに終了することができました。
ご参加・ご協力頂いた皆さん、本当にありがとうございました。
ミニ講座で講演する橋本所員
纒向遺跡出土土器の展示
古代のお金の鋳造体験のようす
勾玉作りのようす
研究チームの皆さんによるサンプル採取の様子
2012年9月11日に当センターにおいて東北大学名誉教授の鈴木三男先生を代表者とする研究チームの方々による纒向遺跡・大福遺跡出土の
この研究は遺跡から出土した
調査結果が出るのは暫く先のことになりますが、桜井市内出土の資料が詳細な分析を受けるのは初めてのことですので、結果がでるのを楽しみに待ちたいと思います。